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ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか

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書評「ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか」 ピーター・ティール NHK出版

昨年よく売れたビジネス書という「ZERO to ONE」を読んだ。脳にガツンとくる本だ。
著者のピーター・ティール氏はPayPalの創業メンバーでCEOでありシリコンバレーでスタートアップ企業に投資している起業家である。この本は2012年にスタンフォード大学で起業の為の講座から生まれた本である。

既存の成功パターンを模倣する起業ではなく、新しいモデルを構築する起業を勧めている。特にこの本の中でティールが強調しているのは、「起業家はラストムーバー(終盤)を考えろ」「自分の頭で考えること」である。

20世紀のオールドエコノミー型ビジネスにおいては先達の真似をしていればよかったがボーダレスな時代になりスピードが早い時代では勝つ事はできない。真似だけの社会は2008年の金融危機よりはるかに悲惨の結末がまっていると言い切る。

「すべての起業家は、自分の市場でラストムーバーを考え戦略を立てるべきだ。まずはじめに、こう自問しなければならない——今から10年から20年先に、世界はどうなっていて、自分のビジネスはその世界にどう適応しているだろうか?」

この問いには、近くて遠い未来をイメージできる洞察力が必要だ。2020年の東京オリンピックまでの事を語る人は多い。イメージもしやすい。しかし実際は半年先しか見えていない。にも関わらず、20年先は今の延長線上でものごとを考えられるだろうか。明日は今日の延長の様な直線的な思考では考えることができないだろう。日本の人口は1億人を割るのが2050年頃である、生産人口と消費人口が減る訳であるから経済成長は停滞低下するのは自明である。垂直的な思考が必要だ。

技術の進化により生活はどう変わるのか?自動運転する車、無人タクシー、ドローンでの宅配便、職場環境の変化による満員電車からの解放。先進国においてはいわゆる労働力を提供することで賃金を稼げる時代は終わりそうだ。そうなるとビジネスマンはドラッカーの言う「知的労働者」に変化せざるを得ない。この転換ができていないと収入格差もますます大きくなるだろう。

10年から20年先に世界はどうなっているのか?「2030年世界はこう変わる」米国国家情報会議編によればアメリカの様な覇権国家は無くるという予測もある。もはや中国は覇権国家となりえない。ロシアは軍事大国であり野心的に領土を広げようとするが、経済的には脆弱だそうだ。そうなると、国家が支配していた経済社会から自由に資金が往来し支配する世界や、人や組織も場所に捉われず最適な場所でビジネスをする社会が広がるだろう。

途上国が先進国に追いつき、世界経済全体が横ばいの成長になる。その状態で経済は持続できるか。希少な資源を巡る競争が加わり先の大戦の時代に逆戻りするのでは無いか、食糧は安定して供給できるのか、悲観的なシナリオだと停滞から各国の衝突に発展する可能性が高いという意見もある。

しかし、ティール氏はこの危機を打破し素晴しい未来へと向かうには今までに無いテクノロジーを期待すべきであるという。その技術的特異点(シンギュラリティという)を受け入れる準備が必要である。よりよい未来を選択する知性が必要であり、本書で繰り返し述べている「自分の頭で考える」ということである。

人類の成長発展を技術の成長だけに期待するのか、人の価値観そのものを変えていく必要があるのかは議論が別れるところだろう。人の価値観も大きく転換する特異点が来る可能性もある。このラストムーバーアドバンテージ(終盤を制する)者が最終的な勝者である。10〜20年先の出口から考えろ、というティールの問いかけに自ずと視野を広くさせられる。

では、終盤を制することテクノロジーを生み出す起業家にはどうやったらなれるのか?という疑問に対しては「自分の頭で考えゼロから1を生み出すこと」これがよりよい未来を作る為の方法だと著者は訴えている。そして起業の分野は「独占をすること」も勝つための方法であるという。

「ビジネスは競争では無く独占せよ。」航空界社はGoogleより高い売上を上げているにも関わらず利益は低く時に赤字になる。競争が激しくアライアンスを組む事で無用な競争を回避している様に見える。「完全競争下では長期的に利益を出す企業は存在しない」「永続的な価値を想像してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネス(汎用的な商品を扱うビジネス)を行ってはならない。」重要な示唆である。

参入してもライバルも多く価格決定権を強者に握られ新しいサービスもすぐに追随されてしまうビジネスは泥沼だ。一昔前は花形だった一部の資格型の職業や大手通販モール内の出店者はその泥沼の典型だろう。ライバルの存在が自社を成長させるということを聞いたことがある。ティールはお互いの利益を食い潰しているだけであると言う。それは需要が急激に減っている訳では無いのに苦戦を強いられている家電メーカーの例でも良くわかる。世界の亀山と喧伝し薄型テレビ最強を謳歌していたシャープや構成能テレビのエンジンを開発した東芝の姿はこの数年で失墜した。

なぜ、競争的なビジネスを避けるべきなのか?競争的ビジネスを避けるメリットはどこにあるのか?それは、「同じようなライバルが沢山あるなかで必死に闘わなければ生き残れない。利幅の薄いビジネスでは従業員へもまともな報酬が払えないし、少しの無駄も許されないそれは、「競争的な生態系は人々を追い詰め、死に追いやることもある。」という。外食業界におけるいわゆるブラック企業問題を思い返す迄もなく競争のよるデメリットは見えている。

一方独占企業はどんなメリットがあるのか。「ライバルの存在や競争を気にする必要が無い為に、社員やプロダクトや広い社会への影響を考える余裕がある。」という。

つまり、日々の売上の事しか考えられない企業と、それ以外も考える余裕のある企業とでは大きな違いがあるということである。当然後者の余裕がある企業を目指したい。多忙の中であるが、一度ビジネスの手を止めて10年から20年先の社会や自社の在り方から見直すことが重要である。熾烈な競争をしている分野があるならば自ら回避すべきだろう。

そういえば、戦争に勝つ為の本である「孫子」もまず戦争を避けよということを書いている。競争を避けることがもっともスマートな方法であることは昔から変わらない様だ。

独占的利益を出せるビジネスを作る。これを改めて認識できただけでもこの本の価値はある。欲を出してどうやってやるのか?という問いにもティールは答えてくれている。独占を築く方法については、小さくスタートし少数の特定のユーザーしかいない場所を探してスタートせよということである。

こんな理想な市場があるのか?自分自身で理想の市場を作り出すことである。少数の特定ユーザーがいる場所を探し占拠するか、特定ユーザーに支持される商品を開発提供することで理想の市場を作り出せる。

既に競争下にある事業においてもこのヒントは重要で、一方では競争しつつも少数の特定ユーザー向けの商品を提供することは可能である。例えばコンビニエンスストアのオーナーの場合は、すでに至るところに店があり買い手が選択できる市場でコモディティ化されている。本部が価格商品など決定していて大きな選択肢は店のオーナーに無い様に見える。

しかしながら、長く成功していて大きな利益を出しているコンビニオーナーを多数居る訳で少数の特定ユーザーを囲い込んでいる。例えば、足の不自由な世帯や高齢者への宅配や便利屋的なサービスをしているコンビニオーナーもいる。月に数万円の消費になる訳であるから大きな利益に繋がっている。

大きく事業を転換せずとも現在の事業のやり方を見直すだけでティール氏の言う独占的企業に近づくことは可能だ。
ゼロサム型社会、他者から奪って勝つ事が成功という時代から新たなテクノロジーがなければ地球は持続不可能である。新しいテクノロジーやイノベーションが垂直的な世界の進歩を作ろうというメッセージはものの見方思考を変えさせてくれる一冊である。

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Unknown

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