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シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法

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シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法 ビジネスを指数関数的に急成長させる サリム・イスマイル著 日経BP

これから起業する人であれ組織の中にいる人であれ10年先のビジネスを考えているならば読むべき本である、ビジネスに対する価値観を一変させられる。この本のテーマはアメリカでの飛躍する企業の特徴をひも解きどうすれば飛躍的企業を作れるのかというロジックを説いている。なんとなく旧来型のビジネスモデルでは先行きが無いと感じている我々に強烈に強い刺激を与えてくれる。

タイトルにあるシンギュラティ大学という言葉は馴染みが無い。シンギュラリティとは「技術特異点」と訳され「テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来るべき未来のこと」と未来学者のレイ・カーツワイルが提唱している。

「技術特異点」の後の未来は科学技術の進歩をさせるのは人類で無く人工知能だという。つまり人工知能がより優れた別の人工知能を作り出し、更にもっと優れた人工知能を作り出して行くということである。これが指数関数的に増えるというのだ。

シンギュラリティ大学は2008年にレイ・カーツワイルとピーターHディアマンティスが共同で立ち上げている。2008年といえばアメリカ発祥でリーマンショックがあった年で、社会も経済もマインドは冷えきっていたはずだ。その転換点の年に設立されているのにも意味がある。この大学ではムーアの法則を背景とした企業の指数関数的な急成長に注目している。

Google創業者のラリーペイジはこう語っているという。「私はいま、非常にシンプルな指標を使っています。それは『いま取り組んでいる仕事は、世界を変えるだろうか?』というものです。」また、スティーブジョブズは「世界を変えたくは無いか」と問いかけていたという。

テクノロジーの進化に伴う飛躍的企業には、単に収益の目標だけではなくこの様な強い理念や信念がある。そしてそれを可能にしているマネジメント体制があるし目標の設定の仕方がそもそも違う。

本書のテーマである「ビジネスを指数関数的に成長させる飛躍させる企業」とは、収益を最大化させる為に事業の規模を大きくすることを手段や目標とするのではない。

日本でも成熟産業化している殆どの業界では規模の経済を追求した結果、前年対比をクリアすることやコスト削減が目的となり理念よりも優先され時に不正会計に手を出すなど大きく本質から逸脱してしまうこともある。

旧来型のビジネスモデルは1をn倍しライバルよりもnの数を大きくするというものだ。よりよい製品を作りn倍化をより効率よく速くできることがこれまでの優秀なビジネスモデルである。

市場が拡大し規模がnの数を大きくするスピードより速く増えているのであればライバルがいても共に成長することは可能だ。しかし、市場の伸びしろが少なくなり無くなればライバルから奪うしかないつまりゼロサムゲームに突入する。値引き合戦、広告合戦など国取りゲームごとく死闘を繰り広げることになるのだ。

誰かが倒れるか市場そのものが縮小するかがその例であろう。一方、指数関数的に成長する企業の場合はその必要が無いという。写真の業界のコダックがインスタグラムに企業価値を奪われ、レコード業界がiTuneに市場を奪われているのもこうしたことからである。

飛躍型企業の特徴は情報をベースにした技術が指数関数的な急成長を遂げることを利用している。つまり自社の資産や情報だけでなく、顧客の情報や口コミを利用するビジネスモデルである。ユーザーのスマートフォンからの情報が最大の資産となるのである。

飛躍型企業の作り方はどうなのか?本書で強調しているのはまず必要なことは野心的な変革目標(MTP Massive Transformative Purpose)で従来方飛躍的な考え方をし目標設定していることにある。小さく考えていては急速に成長できる戦略などつくれないからだという。

例えば、Googleの「世界中の情報を整理する」 TEDの「価値あるアイデアを広める」などだ。重要なのは根本的な変革や地球規模を目指す点だという。
このMTPが人の心を鼓舞し人を惹き付けるのだ。

MTPは次のような質問に答えることが出来なければならない。「なぜそれを実行するのか?」そして「なぜ私たちの会社は存在しているのか」ということだ。常に問いかける事によりクライアントのニーズのズレが発見できたりクライアントが気がついていない本当の願望を汲み取ることができるかも知れない。

日本の産業構造はどうしていくべきなのかは明らかだ、旧来の製造業型中心からシリコンバレー型企業への転換を急ぐべきであるだろう。2020年のオリンピックに向けて、建設業や運輸交通産業、サービス業は一時的な成長はするであろうが、それは単に従来型のいわゆるnを増やすことでの成長である。

ここ最近のニュースでも産業革新機構がシャープに支援3,000億円の出資案が発表。液晶事業を分社しジャパンディスプレイと統合するということを固めたと報じている。(1月22日毎日新聞)

産業革新機構とは、国が2860億円の出資企業群が140億円出資のファンドである。つまり殆どが税金から賄われていて、事実上シャープを救済する形である。またシャープが強みとしていた液晶部門がジャパンディスプレイと統合されることになるが、ジャパンディスプレイはソニー、東芝、日立のディスプレイ部門が統合された会社で既に筆頭株主が産業革新機構だ。事実上国営企業といっても過言では無い。

地上デジタルテレビ化に伴い一斉に薄型テレビに国中のテレビが切り替わったがその好景気後を官民ともにデザイン出来ていなかった。国が作った特需が過ぎれば税金で救済する形になったということであろう。

高画質でクリアな映像が楽しめる様になったことは素晴しい功績である。しかしながら、日本市場や世界市場においては成熟産業下でライバル同士が国の指導のもと統合されるという事態になっている、この本の著者が伝えたい旧来モデルの典型的な例であろう。

日本も2020年の東京オリンピック特需の先を見るのであれば、次の時代の飛躍型企業が発展できる環境設定が必要である。アメリカの場合はシリコンバレーに飛躍型企業が集積されている。通信環境が発達したにも関わらず飛躍型企業がその場を選ぶというのは興味深い。

企業や起業家も新しい飛躍型モデルへの転換に移行しなければならない。本書では、転換する為のステップも言及している。特に以下に分類されている。
①飛躍型企業をどの様に実現するか?
②飛躍型企業の需要を中小企業にどう適用するか?
③飛躍型企業の概念を大企業にどう組み込むか?

①飛躍型企業をどの様に実現するのか?
今、誰もが知っている飛躍型企業は思いつきや偶然でスタートアップできた訳でも無い事に当然ながら気づかされる。まず第一歩の成功の鍵を握るのはアイデアを実行に移す為に投資家にプレゼンテーションし出資の同意を取り付けることが何よりも大切なことである。

ちなみにGoogleは350回、シスコは76回、Skypeは40回ものプレゼンをしているのだという。スマートなイメージの強いシリコンバレーも泥臭いこうした活動も無視はできない。創業メンバーの諦めない姿勢を真剣さが世の中を変えていくのだ。

GoogleにしてもSkypeにしても同様のものが無い時代には常識はずれの企画案で納得しがたいものだったであろう。しかしながら、こうしたブレイクスルー思考が人々を鼓舞させ世の中を変えると本書は言う。シンギュラリティ大学では次のような課題を出し社会に必要な領域に取り組んでいる。

例えばあるチームは「アフリカの道路の85%が雨期になると水没することで貧困が改善されない。」という記事を読み解決策を作ることを課題として出された。人々に必要な生活物資が水没して運べないとすれば、道路を舗装し直したり高架にしたりせずにドローンを活用するということを考えたのである。ちなみにドローンは価格性能費がみるみる向上し16kgの荷物を抱えて20キロの距離を飛行できるという。今ではもっと性能が向上しているだろう。

この話は中国の通信が電線の時代を経ることなく、携帯電話の時代に入ったことに似ている。テクノロジーの進化がブレイクスルーに繋がるということである。

日本の場合も大雪で大勢の人が電車に乗れずに待ち続けているニュースが流れていた。経済的損失は勿論であるが健康衛生面にも大きな課題を残す結果となっている。この様な課題をテクノロジーの進化で解決できる日も来るだろう。

②飛躍型企業になる為に中小企業が必要なことは何か
既存型事業を変えるにはカスタマイズが必要だ。本書ではTEDやゴープロなど日本でもなじみの深い企業の例を出しながら成功要素を整理している。2つの条件をクリアしなければならないという。第一条件は急激な変化に対応できる企業文化であるということだ。社内組織だけではなく顧客がついてこなくなるリスクも当然はらんでいる。第二の条件はリーダーシップとビジョンである。目もくらむような速さに会社を加速し、従業員や顧客に力を与え、洗練されたビジネスモデルに変革し広めるにはリーダーシップが必要であるという。

これは、旧型のモデルでの成功例はある。例えばイトーヨーカドーから生み出されたセブンイレブンだ。鈴木敏文氏がオーナーの伊藤氏を説得し全責任を負いアメリカのサウスランド社セブンイレブンのノウハウを吸収して日本流に立ち上げたのがセブン-イレブン.ジャパンである。強力な鈴木氏のリーダーシップと信頼を寄せる伊藤氏の力がなければここまで成長していないであろう。

③飛躍型企業の概念を大企業にどう組み込むか?
大企業がもっとも難しいという。まず、社員の関心が外にでは無く内に向かっている。つまり、社内で発生する社内向けの会議や作業に忙殺されることが多い。次に既に得意としている技術を重視する傾向があり隣接する技術が無視されブレークするーは期待されない。さらに、外部のイノベーションでなく、内部のイノベーションに期待するという。非効率の典型なのが大企業である。

変革が大企業にとって必要であり。成功事例はアップルとIBMである。その成功要因はカリスマ経営者の大胆なリーダーシップである。現金が底をつくまであと数ヶ月というところまで追いつめられて危機的状況を推進力として転換できた。

大企業が方向転換をできない大きな理由があるという。それは方向転換自体が大企業の息の根を止めることにつながりかねないという点である。何もしないことがベストではなく変革をしなければならない。本書では4つのやり方を提言している。1リーダー層の変革、新しい考え方や違う人材の幹部に入れることである。 2飛躍型企業との提携または買収 3現状の打破、自らテクノロジーを開発し駆使することである。難易度は高い。4簡易版飛躍型企業の導入、いわゆるプロジェクトチームである。

旧来の事業をしているのであれ、新規に起業するのであれビジネスマンが繰り替えし読めばパラダイム転換となる本である。

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